中島早貴を讃える〜もうひとつの「携帯小説家」〜

サンシャイン劇場 劇団ゲキハロ第4回公演「携帯小説家


まだまだこだわる「携帯小説家」。


今回のゲキハロは、実は2重構造になっておりまして、
舞台上では、二つのパフォーマンスが同時に平行して展開されていました。
つまり、「携帯小説家」という演劇と、
中島早貴さんの演技および歌とダンス。
これらを、それぞれ独立して楽しむことができたわけです。
GoogleChromeのタブをブラウザの外にドラッグすると、別のウィンドウになる、みたいな感じですね。


まあ、推しメンのいるひとは、誰だってみんなそういうふうに楽しんでいるんでしょうけど、
それにしても、今回なっきぃが演じた竹下広海という役は、
℃-uteの演じた7人の中でも、異様にぬきんでてキャラが立っていた。
脚本・演出上の必然性から逸脱するぐらい。
そして人物造形に最も成功していた。
何だってまたあんなことになったんだか、
太田氏の真意がどこにあったかは知る由もありませんが、
いずれにせよ、
携帯小説家」本編とはまた別に、
おさげ髪の制服なっきぃ
ハロウィンの仮装風の魔女なっきぃ
ピンクフリフリの超ロリロリなっきぃ
そして、最後のミニライブにおけるスーパーダンサーなっきぃという、
めくるめく中島早貴ワールドをわれわれは堪能できることになりました。


劇中、見逃せないポイントがいくつもありました。
冒頭、登場したかと思ったら、岸さんの勢いに負けて後ろに引っ込んでしまうヒロミちゃん
アキヨシに別の子と間違われても、申しわけなくてつい「ハイ」と返事をしてしまうヒロミちゃん
「呪われてるとか(ハートマーク)」とうれしそうに提案するヒロミちゃん
「いちばん地味なのを選んできたんだけど…」とスゴい格好で恥ずかしそうなヒロミちゃん


必ずしも、「竹下広海」が、中島早貴本人のキャラクターとあってるわけではないんですよね。
なっきぃ本人は、もうちょっと強気な性格で、数学が得意、本はあまり読まないという人で…
にもかかわらず、なぜかくも成功してしまったのか?
…わからん、太田脚本と、女優中島早貴のあいだに作用する潮汐力が生み出した奇跡としか言いようがない。
演技のほうも、前回よりは進歩してると思いますけど、まだまだうまいとはいいがたい。
しかし、あの鼻にかかった声が、妙に心地いい。技術的なことはどうでもいいと思わせてしまう。
フリフリ衣装みたいなものを着ていても、それに負けず、かといって圧倒もしない絶妙の存在感。


そして、最後にわれわれを待ち受けていたのが、「涙の色」。
あれはなんだったのか。
他の6人にも目を配ろうと思っても、それができない。どうしてもセンターにいるなっきぃに目が行ってしまう。
中島早貴はダンスがうまい」などという知識は、まったく表層的なものに過ぎなかった
すみずみまで、力みも緩みもまったくない、しなやかな体の動き。
それをわれわれに伝えるのを妨げない衣装と髪型。
めくれあがるスカートを、さりげなく手で押さえるときのたおやかさ。
ほとんど完璧だった。
何回観ても、それで足りるということがなかった。
明日、もう1回やるといえば、ためらうことなく観にいくでしょう。


舞台は、時としてあういう奇跡を、あんな場所であっけらかんと実現してしまう。


ヲタ界隈でよく使われる「神○○」という言い方ですけど、
あれは、意外に深遠な表現なんでないかと思った次第。
まさにそういう領域を覗いてしまうわけで…